【許章潤(きょ・しょうじゅん)
元清華大学法学院教授。1962年中国安徽省生まれ。中国政法大学、豪メルボルン大学で法哲学などを学び、豪から帰国後の2000年より清華大学で教鞭を執る。「清華法学」編集長や「法治と人権研究センター」所長などを務める。05年には中国法学会から「全国十大傑出青年法学家」にも選ばれた。中国における改革開放派の代表的な言論人であり、これまでも習近平政権や、中国政府の対応を批判してきた。
             イラストレーション=阿部伸二 Shinji Abe

 「我々は新型コロナウイルス感染症との戦いに勝利した」──。

 発生初期において、中国政府が情報を隠蔽し、感染の拡大を阻止できなかったと、国際社会からは批判を受けているが、中国政府は武漢市のロックダウン(都市封鎖)や、デジタル技術を活用した感染者の捕捉などにより、感染拡大を食い止めたとして「コロナ対策の優等生」を標榜、対策が遅々として進まない欧米などを「敗者」と見下ろす言動も目立っている。

 中国政府のコロナ対策の要諦は国民の徹底かつ厳格な管理と言えるだろう。この方針はウイルスを巡る言論にも同様だった。感染の原因や実情を自らの視点で取材し、人々に伝えようとする「市民記者」ら、政府にとって目障りな存在を沈黙させてきたからだ。政府にとって不都合な異論をウイルスのように徹底的に排除した上で、「コロナとの戦いに勝利した中国共産党の指導こそが正しい」という考えを人々に植え付けてきた。2020年は習近平政権下での言論、思想統制が、コロナ対策を口実により強化された1年だった。

 だが、当局による弾圧を受けながらも、言論空間を守ろうと苦闘する言論人が中国には存在する。その代表的な人物、許章潤(きょしょうじゅん)先生と彼を支援した耿瀟男(こうしょうなん)さんを取り上げたい。

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